
日本エッセイスト・クラブ賞とは

「新鋭なる評論家、エッセイストが一人でも多く出現、自己の正しい自覚において新鮮なる活躍を」――。そう唱えて、日本エッセイスト・クラブ賞が制定されたのは、クラブ創立翌年の1952年のことです。
小説や詩歌などの分野では各種の顕彰制度が整っていましたが、評論・エッセイの領域では初めての試みでした。
ただし、「受賞の対象となるエッセイは、その範疇(はんちゅう)がひろく、かつ甚だ莫(ばく)としている」と、初回の審査について、当時の理事長、阿部眞之助自身が述懐(会報 4号)しているように、選考はかなり難航したようです。
審査対象とする作品は出版社や会員、そして著作者本人から推薦されたものですが、随想、評論、ノンフィクションから伝記、研究、ドキュメント、旅行記などまで、まさに多種多様な作品です。それらを対象に審査の難航はその後も繰り返される中で、ユニークな賞としての歴史が築き上げられてきました。
2025年でこの賞も通算73回を数えました。受賞者は計196人にのぼりますが、受賞作品の幅広さは当然、受賞者の活躍する分野の多様性につながります。その名簿をみると、政治や法律の専門家、あるいは理系の学者、技術者、芸術家、音楽家らの名前が並んでいます。
例えば(以下、敬称略)、学術分野では、民俗学者の宮本常一、最高裁判事で法学者の団藤重光、西洋史学者の木村尚三郎、数学者の藤原正彦。
芸術分野では、洋画家の野見山暁治、書家で美術家の篠田桃紅、染織家の志村ふくみ。音楽分野では、シャンソン歌手の石井好子、指揮者の岩城宏之、シンガーソングライターのさだまさし。
さらに演劇・映画などの分野では、俳優で演出家の芥川比呂志、女優の高峰秀子、沢村貞子、吉行和子、岸惠子。そして、政治家の加藤シヅエ、作家の畑正憲、中野孝次、元NHKアナウンサー山川静夫、イタリア在住のジャーナリストの内田洋子——こうした方々が受賞しています。
まさに百花繚乱です。
第73回 日本エッセイスト・クラブ賞 として、
笠間直穂子さんに授与されたクリスタル盾
